TOKYO ART
& ANTIQUES

東京 アート アンティーク 〜日本橋・京橋美術まつり 2017

4.14( 金 ) , 4.15( 土 )

店主インタビュー 中長小西( 2011 年)

中長小西

小西哲哉氏

Q こちらのお店を出された経緯を教えて下さい。

A 大学を卒業して会社に就職したんですが、自分に向いた仕事でやりたいことは何だろうって毎日考えていて。端から見ると思いつきに見えたかもしれないですが、自分の中では美術に携わって、それを仲介できる仕事が出来たらそんな楽しいことはないと思って。それでたまたまご縁があって、水戸忠交易というお店に入らせていただいて。入って休みもなかったんですが、楽しくて楽しくて。上の階に住みこんでいました。

Q 昔はお店に住み込んで修行するものだったんですか?

A そうですね、皆そうだったみたいですけれど、今は誰もいないです。あの辺では僕が最後ですね(笑)。私は近代美術工芸を扱っていますけれども、このジャンルはまだまだやれることが色々とあって、まだ評価が決まっているようで決まっていない所があるので、自分として関わって仕事を出来る所がいっぱいあります。それでいて平安、桃山、江戸初期といった時代が動いた時期のように、時代が動くと文化も動くので美術も面白いものが出てくるんですが、今はちょうどそういう時代だと思うので、そういう所を中心にやっています。今回の展覧会も岡部嶺男さんの天目を展示していますが、嶺男さんの言葉「死神よりも生の優位を謳いあげる音楽、それが芸術だ」というのがあります。

今回震災があって、美術は何ができるのかという問題に直面していますけれども、でも芸術というのはまさにこういうことで、自然というのは偉大で人間は到底かなわないわけで、それでも何か創り出したり、嶺男さんも言っているのだけど、そう言っている人を応援するのが芸術なんだと。高村光太郎なんかも「生命の戦慄なき芸術は滅びる」と言っているんですけど、こういう時だからこそよりそうだと思うんです。美術がこういう時代に癒しにはなるんだけれども、癒しというそんな生易しいものではなくて、もっと強い人間の営みというか、生きているものを応援するというか奮い立たせる、そういうものをやって行きたいと思っているんです。もちろんそれを表現するには抜群の技術が必要で、でも技術だけではなく、その人が全身全霊で創り上げた想いが合致したものを作っている、嶺男さんはそういう数少ない芸術家だと思います。

Q 中長小西さんの扱っているものには何か独特なカラーのようなものを感じるのですが。

A 口ではうまく説明は出来ないんですけれども、毎回自分がやりたいと思えるものをやって行きたいと思っているんです。普段の展示で見て感じ取って頂くしかないというか、私も展覧会をやり続けるしかないな、と思っています。スペースとしてホワイトキューブも好きなんだけど、どこに行ってもそればっかりになっちゃったから。照明も割とフラットなものが多くなって、あれもいいんですが、みんなが一緒になっちゃったら面白くないから。今度世の中がこんなお店ばかりになったら変えると思います(笑)。

Q ご主人は何か趣味はありますか?

A いえ、もう美術だけですね。仕事って時間とエネルギーを使うから、前の仕事をしていた時もそうでしたが、仕事ってどんなに忙しくても満足できないので、他のことをする時間がもったいないと思っていたんですね。でも好きな美術をやりたいと思っても、仕事はずっと続きますので、仕事と趣味を一体にしてしまおうと思って考えたのがこの仕事だったんです。趣味であり、仕事であるものってそこに集中できるじゃないですか。今まだ店を出させていただいて2年半だからまだ仕事に夢中で、息つく間もなくやっていますが、こんなときだから面白いというのもあります。

Q 元々学生の頃から美術に興味があったわけではないのですか?

A 潜在的に好きだったんでしょうけれども、ただそういうものに触れる機会がなかったですね。でも、学生の頃に海外に行ったら一生懸命美術館に行ってたな、と当時の友達には言われるので好きだったんでしょうね。気がつかなかったんです。それに仕事で美術商になろうなんて普通思いつかないじゃないですか。だから単純なイメージだったんですけど、絵に囲まれてたいして仕事もしないでコーヒー飲んでるみたいな(笑)。あんなので仕事になったらそんないいことないよな、って。実際は忙しくて違いましたけれど。
でもこの仕事の面白い所は、常に同じことの繰り返しじゃなくて、いつも新しいことやものを介して人と出会って、毎日違う仕事になるというか、それが楽しいですね。苦しくもありますけど。

Q これからどのように展開して行きたいと思いますか?

A 今までなかったような展覧会を、自分の中でこういうのがやりたいというのを続けて行けたらいいですね。それが何かと言われるとわからないですが、皆さんに来ていただいて、尚かつ意義のある展覧会を続けていければと思っています。それをどうすればいいかというのは、毎日考えています。

Q 始めてこういったものを見に来たときにどういった所を楽しんで欲しいと思いますか?

A もちろんものを見ていただいて、手にとっても頂けるので、是非手にとってみていただきたいです。僕は、この仕事に入った時に最初は美術のこと知らなくて、近代美術館に行って絵が並んでいるのを見に行くんですが、ぱっと部屋に入った時に、一点一点見るんじゃなくてぱっとどれが好きかとかどれが欲しいかという風に、これはプロ的ではないんですけれども、そういう見方をしていました。でもプロとして勉強もしなくてはならないので、そういう感覚がだんだんなくなっていくかもしれないと思ったんですが、それは常に無くさないようにしています。ものを見た時にどれが好きか、純粋な気持ちで見られるようにしたいな、とこの仕事に入った時にそう思ったのを今でも覚えています。だから今回の東京アートアンティークでどんなお店に入られても、一点買うとしたらどれかとか、それは値段じゃなくて、そういう見方もしてほしいです。もちろん勉強していけば後でもっといいものがあったとか、そういうこともあるかもしれないけれど、そういう風な見方も未だにするようにしています。それをされたら楽しいんじゃないですかね。

Q 期間中は呈茶をされるそうですが。

A お抹茶は常にお出ししているのですが、ちょっと時間とがかかりますから、混んでいると全ての方には難しいかも知れませんが、ゆっくりしてもらえる時にお茶をお出しするのは通常と同じスタンスです。

Q 昨年もお茶碗の展示をされていましたよね。

A 普段、お茶じゃなくても絵をかけて、壷なり茶碗なり花生けなり、一緒に展示することが多いんです。お茶の世界からするとお茶と言うわけではないんだろうけれども、空間というか日本のお茶の美意識というか、そういうものが出てしまうのかな。オープンしたときは敢えてお茶の匂いを消そうと思ってお茶碗とか一切出さなかったんです。まだお茶から入りたくなかったというか。去年の展示はオープンから約1年半経っていたから、そう片意地はらずにと思ってお茶のしつらえをやってみたんですけど。一つ一つの展覧会で自分なりにあるんですね、そういった最初はこれをしたくないとか。お茶も完成された文化で美意識を持ったものだから、僕もこの世界に入ったときは習いに行ったし、利休の本を読んだりしてすごい世界だなと思って。そうするとすごくお茶に感化されるんです。見るものをなんでも頭の中でお茶室に入れてしまうんですよ。それだけすごいんですけれども、そういうものは排除してしまうものの方が多くなってしまって、それを抜き去るのにすごく時間がかかって。だから、最初にお茶ありきでものを見るんじゃなくて、ものありきで感動して、その先にお茶があればいいな、と最高の見せ方の一つとしてそういうスタンスでやれればいいな、と思っています。

Q 今回の展示の為にカタログもつくられたのですか?

A ええ、これだけの展覧会をするということに責任もありますし、うちのギャラリーだけではやりきれなかったことがあるかもしれない。カタログを残しておけばまた今後これを取り上げて下さる方がいらっしゃるかもしれないですし。

Q 嶺男天目を展覧するのは本邦初と伺いましたが。

A 本邦初というか、世界初です(笑)。天目茶碗自体は嶺男さんも作ってらしたんですけれども、まとまって展示する機会がなくて。ほとんど発表されていなくて、20年ぶりに近代美術館で回顧展をされた後に岡部家で新たに60年代の作品が見つかって、その時とらえきれなかった天目の全貌を見て頂きたいと思いまして。だから物故作家の作品ではあるんですけれども、新たに世に送り出すので、こちらにも責任があるので、緊張します。

Q 最後に東京アートアンティークにお越しになる方にメッセージを一言お願いします。

A 美術に興味をもってこういう所に足を運んでほしいですし、東京アートアンティークの時だけではなくて、これがきっかけで他の時にも来ていただけたらと思います。

(2011年4月)

中長小西

東京都中央区銀座1-15-14 水野ビル4階

http://www.nakachokonishi.com/

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