菅 木志雄 「『もの』の奥で」
オープニングレセプション:2026年6月12日 [金] 17:00-19:00
この度小山登美夫ギャラリー京橋では、菅木志雄の新作展「『もの』の奥で」を開催いたします。本展は菅にとって弊廊での11年連続開催、そして2006年以来18度目の個展となります。
菅木志雄(1944-)は、1960~70年代の「もの派」を代表する作家として知られながら、現在もなお国際的な評価を高め続けています。2024年に和美術館(中国)、2025年にディア・ビーコン(NY、アメリカ、数年展示予定)、コブラ近代美術館(オランダ)での個展を開催するなど、国内外でその活動はますます広がりを見せており、その長いキャリアを経た今も旺盛な制作意欲で生み出されるみずみずしい作品群は、多くの鑑賞者を魅了し続けています。
また毎年刊行している展覧会カタログでは、本年、小林康夫氏による最新の作家論「菅さんをたずねて、伊東へ ——『水だか石だかわからなくなってしまひました』」を掲載予定です。本展は、菅の変わらず通底する思考と現在の視点、その双方に触れることのできる貴重な機会となるでしょう。
【「質素だけど強烈」*1 ー 菅作品とその世界観】
菅の作品は、木、石、金属、ロープといった身近な素材を用い、わずかな操作と配置によって「もの」「場」「人」との関係性を立ち上げ、私たちの知覚や空間認識を強く静かに揺さぶります。
特徴的なのは、菅が「もの」を単なる素材ではなく、それぞれ固有の存在性をもつものとして捉えていることです。その見えざる存在の深淵をどのように「見る」か。そしてそれにふさわしい場をどのように開き提示するか。そのプロセスを含めて制作の根幹に据えているのです。
「内から外、外から内、物体感は消えていく
。
物体感を認識しながら消えないように作品を提示できればよい」*2
「私の創作活動は、何かを作り出したり表現したりすることというよりは、その存在を消し去ることにある。
『見える状態』と『見えない状態』は同時に存在し、それらは同等の価値を持っていると思う。」*3
その視点は、私たちの既存の認識や価値観を問い直し、人ともの、ものともの、ものと場が響き合う新たな状況を生み出しています。半世紀以上にわたり一貫して探求されてきた菅の制作は、改めて世界との関係性を問い直す思想的表現として注目を集めています。
いままでの主な展覧会に、「菅木志雄展」(広島市現代美術館ほか巡回、1997)、「菅木志雄―スタンス」(横浜美術館、1999)、「揺らぐ体空―菅木志雄インスタレーション」(岩手県立美術館、2005)、「置かれた潜在性」(東京都現代美術館、2015)、個展(Pirelli HangarBicocca、2016)、個展(Dia Chelsea、2016)などがあり、2017年には第57回 ヴェネツィア・ビエンナーレ 国際展にも参加。
その他の詳しいアーティスト情報はこちらをご覧ください:
https://www.tomiokoyamagallery.com/artists/kishio-suga/
【本展および新作に関してーものと言葉の限界に挑み続けて】
本展に際し、菅は次のステイトメントを記しました。
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「もの」の奥で
作品は、「もの」である。もちろんそうでないという人もいる。人の身の回りにあるさまざまなものも「もの」である。そのものと、作品たる「もの」をくらべたとき、どちらがリアルであるか区別しにくい。作品でないものも、作品であるといわれるものも、モノのハンチュウとしては、同じである。たいがいの「もの」は、人の役に立つようにつくられたりして具体的な用途があって人の周囲にある。ところが同じ周囲にありながら、用途がなかったり、必要でなかったりするもの、それが「作品」といわれるものの「立地点」であるように思われる。「作品」は人の思考や意識の発露や外界との関連の中で生まれるが、それは結局のところどこにも属さないものとして人の手に供与されている。人は、一度手にしたものを簡単に忘れない。それゆえ、意識というものが問題になる。それは、人の生きるための世界観を構築する基のひとつでもあるからだ。
菅 木志雄 2026
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新作の「波当」は、緑色の地に木片がちらばり、その周囲の白い枠に一部が乗り、異なる層の存在を意識させられます。「風理」では配置された小さく薄い木片が、上下の枠の上では向きが変わって置かれることで、同じモノでも違う様相を見せています。「間空」は木片が3箇所で集合し、その間はなにもなく木の線がつなぐのみ、密と疎が極端に同時にあらわれています。
菅があるものに触れることで、なぜ作品として成立するのか。なぜそこに、菅とものとの関係や存在性が鮮やかに立ち現れてくるのか。
そこには、私たち自身がものとどのように関わり、世界を認識しているのかという問いが潜んでいます。身近にあるもの、目に見えるもの。菅はそれらを状況に応じて整理し、どのような意識や思考が必要なのかを問いかけながら、私たちに創造的な道筋を提示してくれます。
「雑然とものがある、どこにも属さないものがある、それが一番いい、何かの目的にとらわれない関係性。」*1
いままで作品をつくってきたこと、時間はなんだったんだろう?答えは限界の向こう側にあるのではと菅は述べています。*1
まだ実現していないプロジェクトはありますか?との問いに次のように答えました。
「道を作りたい。山を見るたびに、まだ誰も足を踏み入れたことのない場所へと続く道を作りたいと思う。」*3
菅は人生をかけて、独特な自然観と時代感覚を背負いながら境界性のぎりぎりでものと言葉の限界に挑み続けています。最新作を、ぜひご覧ください。
*1 小林康夫氏による、菅アトリエインタビューでの言葉より、2026年4月
*2 「コレクション展関連講座対談「彩園子(さいえんす)という『場』ー菅木志雄と村井睦平の60年」、岩手県立美術館、2025年11月より
*3 「Where Both Sides Meet 菅木志雄とハンス・ウルリッヒ・オブリストの会話」、個展カタログ、コブラ近代美術館、2025年
最新情報は公式ウェブサイトへ:https://www.tomiokoyamagallery.com/exhibitions/suga-2026/
アクセス
小山登美夫ギャラリー京橋 Tomio Koyama Gallery Kyobashi
〒104-0031 東京都中央区京橋1-7-1 TODA BUILDING 3F
03-3528-6250 11:00 -19:00 日曜、月曜、祝日 公式ウェブサイト @tomiokoyamagallery
