角谷紀章 景色の輪郭
四季彩舎
2023年、四季彩舎で初個展「媒介であり防護壁」を開催した角谷紀章。本展「景色の輪郭」は、それに続く2回目の個展となります。
角谷は、身の回りの風景をスマートフォンで撮影し、そこに残された像を起点に絵画を制作しています。日常のなかで何気なく記録された写真は、時間の経過とともに撮影したときの記憶や感覚から離れ、ひとつのイメージへと変化していきます。角谷はそうした写真と自身の記憶との隔たりに目を向けながら、見ることと認識することの関係を探ってきました。
本展「景色の輪郭」では、私たちの目に映るものを「景色」と捉え、そのなかで認識される対象と境界について考えます。何かを見ることで無意識のうちに引かれる輪郭と、そのあいだに広がる曖昧な領域に着目し、新作とこれまでの作品を通して、見ることと認識することの関係を探ります。
角谷の絵画には、鮮明に描かれた部分と、滲みやぼかしによって像が曖昧になった部分が共存しています。視覚情報の一部をあえて不明瞭にすることで、描かれたものを一義的に決定するのではなく、その先に何があるのかを想像する余地を残します。
曖昧な像を前にしたとき、私たちは自らの記憶や経験を手がかりに、見えない部分を補いながらひとつの像を結んでいきます。角谷の作品における「見えづらさ」は、像を隠すためのものではなく、見る者の想像が入り込む余白として機能しています。
本展で発表する新作《Self portrait》(2026)では、その眼差しが作家自身へと向けられます。描かれているのは、角谷自身の姿です。スマートフォンやSNSを介して無数のイメージに触れ、他者だけでなく自分自身の姿さえも画面越しに見ることが日常となった現在。直接目にするものと、写真や映像を通して見るもの、そこに残る記憶や実感は複雑に重なり合っています。
私たちは何を見て、どこに輪郭を見出し、それをひとつの像として認識しているのでしょうか。
「景色の輪郭」は、描かれた対象だけでなく、それを見る私たちの側にある認識のあり方にも目を向ける展覧会です。
2023年の初個展から3年。新作とこれまでの作品を通して、角谷紀章があらためて見つめる「見ること」と「認識すること」、そしてそのあいだに広がる景色をご覧ください。
アーティストステートメント
私たちが何かを見るとき、目に映る全てを「景色」だとすると、その外側に広がる世界が私と景色を繋ぎ隔てている。この中間的な領域は自分の意識によって生まれるものだが、絶えず揺らいでいる。
絵を描く行為は、キャンバスの形に景色を切り取ることだ。そこには本来存在しない境界線を固定することになる。中間的な領域を取っ払ってしまうことの違和感は常に存在し、鑑賞者に想像を促し解釈を委ねる「Frosted Window」や「Curtain」はその葛藤から生まれ現在の制作に至っている。
また意識に焦点を当て、認識することそのものを表現しようとした「Fog」から、景色を上から塗り潰したような筆致を模した「Scrawl」へと変遷する。対象とその背景との境界を曖昧にし、私自身の身体性や態度が表現されている。
「Self portrait」は2016年、大学の学部4年生の時以来に自画像を描いた。もっとも私自身に近いモチーフとして制作した。
見ること、そして描くことで生まれる境界と、その外側に身を置く自身の存在について考えながら本展の制作に臨んだ。
— 角谷紀章
アクセス
四季彩舎 SHIKISAISHA
〒104-0031 東京都中央区京橋2-11-9 西堀11番地ビル2階
03-3535-2131 12:00 - 18:00 日曜・月曜・祝日 公式ウェブサイト @shikisaisha
