塚本智也 個展「Journey of Encounters」
塚本は1982年石川県生まれ。神奈川県を拠点に制作する現代美術家。
エアブラシで極小のドットを重ねて点描効果を生み出し、ドリッピングと軽やかな筆致を融合させた絵画を手がけています。赤・青・黄の三原色を幾重にも吹き重ね、網膜上で混色させることで図と地の境界を溶解させる技法が特徴です。
桜・鯉・人物像・鹿などのモチーフを通して光と影、生と死の循環を探究します。生の植物を型取ったステンシルやネガ/ポジ反転を駆使し、ジョルジュ・スーラの視覚混合理論と琳派の装飾性を現代的に更新。日本的な「かざり」の感性とミニマルな制作プロセスを両立させ、観る者を没入体 験へといざないます。
本展は、塚本にとって東京では実に13年ぶりとなる個展であり、今年開催される展覧会の中でも最大規模を誇ります。ぜひGallery & Bakery Tokyo 8分でご覧ください。
展覧会ステートメント
Journey of Encounters - 出会いの旅
日々の暮らしには、光のきらめきや、身体を通り過ぎてゆくそよ風の訪れのように、思いがけない「出会い」が無数に潜んでいます。本展は、そうした瞬間と瞬間の交差点を可視化する試みです。
桜の淡い花影、人のおもかげを残す残像、森で静かに息づく鹿の姿といったモチー フを通して、偶然生まれる時間の重なりを絵具の粒子で とらえたい と考えました。 赤・青・黄の三原色をエアブラシで霧のように重ね、あえて残した小さな隙間が、 現れては溶けゆくシルエットを生み出します。その儚い循環は、咲いて散り、また 芽吹く桜の営みを思わせ、「もののあわれ」に通じる無常を呼び起こします。自身 の輪郭が、ゆるやかに光の中へと溶けてゆき、やがて画面は、揺らめく色彩の星座 へと変容していく。
ここにあるのは終わりのない旅の一断面です。絵具が重なっては滲み、また消えて いくように、私たちもまた無数の出会いのなかで変化し続けます。本展が、次の 「出会い」へ向かう小さな道標になれば幸いです。
塚本智也
詳細は公式ウェブサイトへ