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森夕香「霧 露」

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Yutaka Kikutake Gallery Kyobashi

外はいつの間にか暖色に変わっていた

空気は冷たい

イチョウの木を下から見上げると黄色と青色の点描に見えた

風が吹いて落ちる葉っぱと光と踊っている人

外にあった世界が反転して内側になった話

窮屈そうだった骨壷

人形町の勝手植栽

もらった2つの柿と買ったロウヤ柿

見えないものと見えるものを集めて

いつもの妄想に混ぜ込んで岩絵具にのせるのが好きです

  

Yutaka Kikutake Gallery Kyobashiでは、2026年1月13日(火)- 2月21日(土)まで、森夕香の個展を開催いたします。1991年滋賀県出身、現在京都を拠点に活動を展開する森は、日本画の顔料と支持体を基盤に、人と植物という二つの大きな主題を描いています。幼少期の環境によって培われた、自然や植物に対する彼女の感受性は、身体表現の実践経験からも来る身体性への高い関心を経て、人と人、人と植物、あるいは植物同士が融合する連続体のイメージとして結実しています。本展に際し森は、より日常的に採集された素材を元に、人と植物の連続体、そして網の目のような有機的かつ混沌とした植物の形態を主題とした「Mesh」シリーズを中心とする、8点前後の新作群に取り組みました。

  

人と自然の境界に対する森の考察は、有機的、かつ臓器的とも描写されうる流体のモチーフとして画面上に可視化されてきました。本展のために制作された作品群は、これまでの彼女の取り組みの延長線上に位置しながら、季節の移り変わり、ふと目に留まった街中の植物、風景、あるいは会話などといった、より作家の日常に根差した視点に端を発しています。描かれるものである「図」と、描かれなかったことで背景として想像される「地」の相互関係、あるいは崩された秩序が「地」を「図」に変え、また「図」が「地」にもなるような流動性の探究は、彼女の描く世界観の特徴的な点のひとつです。画面を覆う植物の有機的な形態が顕著な「Mesh」シリーズは、そうした彼女の試みを雄弁に物語るものと言えるでしょう。また森は、以前より窓を介した建物の内と外の循環を描くという試みにも取り組んで来ました。本展では、知人と交わした会話が契機となり、身体の内と外が反転する実感を得たという彼女は、新たな有機的フォルムの探究を推し進めています。

 

これまで単体で表現されることの多かった、人と植物の融合する連続体のイメージは、個から群像へ、モチーフから風景へ、木から森へと変容を遂げつつあります。採光の少ない京橋スペースの特徴を活かし、内省的な展示を構成したという作家の言葉通り、その室内に含まれる鑑賞者もまた内と外の境界、および循環、さらには反転といった視点についての考察を促されることでしょう。身体と環境が内包しあい、両者が流動的に変容し続けるさまを描く森の想像の断片と、その新たな試みの記録をぜひご高覧ください。

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