2025.4.23

骨董・アンティークも現代美術も、どちらも楽しむきっかけに 「タカ・イシイギャラリー 京橋」

タカ・イシイギャラリー 京橋 石井 孝之 様

 

━━1994年に東京・大塚で開廊されたタカ・イシイギャラリーさんは、現在、六本木に2か所、天王洲、京都、群馬・前橋、そして2024年11月、TODA BUILDINGの開業と同時にオープンした京橋と、6つのスペースを運営なさっています。

現代美術のプライマリーギャラリーとして、30年以上にわたり第一線で活躍し続けていらっしゃいますが、その理由、といいますか、面白さや魅力とは、どんなところにおありでしょうか。

  

そうですね、やはり、いろんな作家たちと相談しながら一緒にものを作って、出来上がっていく様子を共に経験できるって、非常に面白いんですよね。彼らがキャリアを重ねていく中で、もしかしたら表舞台からは姿を消してしまうかもしれないし、歴史に残るような存在になるかもしれない。もし歴史に残れば、それをお手伝いした、という満足感が得られることもあります。

  

  

━━各スペースでは、大学院を修了したばかりの若い作家から、キャリア50年以上の作家まで、国内外、本当に幅広い世代の方々を紹介されていますが、何を基準にお声がけしているんでしょうか。

  

だいたいは直感ですね。自分の中の引き出しから、いろいろと出してみながら、という感覚です。

ギャラリーをはじめて最初の10年くらいは、ラリー・クラークやジャック・ピアソン、ナン・ゴールディン、森山大道さんや荒木経惟さんなど、写真家、特にスナップのようなストレートな写真家を中心にしていましたが、もうずいぶん前からこだわってはいませんね。経験値もたまってきて、“こうだからいけない” “こうでなければやらない”ということもなくなりました。

  

  

━━作家の方々と、それぞれの作品や創作の方向性について、お話しすることはありますか。

  

予定している展示のテーマやスケジュールはもちろん話しますが、作品そのものや技術面に関しては一切言いません。あと、さすがにこれは、という場合は言いますが、ダメな時にダメ、とも言いません。私がダメだと思っているだけで、もしかしたら良いのかもしれないし、わかりませんから。

  

私たちは直接は作りませんが、現存している作家との仕事は、一緒に作って一緒に育っていく、という感覚に近しいものがありますね。その点が骨董とは少し異なるかもしれません。  

でも私自身、骨董は大好きなんですよ。好きなんですけれど、ぐっと深みにはまっていってしまいそうなので(笑)、購入しているのは家具が中心ですね。

  

 

 

  

━━そうだったんですね。ご案内いただいたこのお部屋のインテリアも、本当に素敵です。

  

毎年、ヨーロッパなどで開催されるアートフェアに参加する時、ブースに置く家具を、パリに拠点を置く知人のディーラーから借りるんですね。借りるんだけど、そのまま買って日本に持って帰る、というのがいつものパターンで(笑)。どんどん増えてしまうんですけれど、各スペースに置いて使っていますね。

  

例えばここには、ジャン・プルーヴェの「スタンダードチェア」がありますが、第二次世界大戦中の金属不足の頃に作られた、木材のみでできているモデルです。割と希少ですね。

  

  

━━信頼できる方からの紹介なら、安心して購入できますよね。また、セカンダリーでアート作品を購入するときにも通ずる話です。

  

はい、アンティークも骨董も、セカンダリーも、やっぱりそこが重要ですよね。特に家具は偽物がとても多いので、確実なところから購入しています。でも、骨董がわかる方もよくおっしゃいますが、実際に触ってみると、何となくわかるものですよ。

  

骨董といえば、海外のアートコレクターたちは、例えばゲルハルト・リヒターの絵画に、趣ある古い壺を取り合わせるなど、アンティークや骨董と現代美術の両方をシームレスに楽しんでいますが、日本では、現代美術を購入する方が、骨董へも関心を持って購入する、ということはあるものの、骨董をお好きな方が現代美術へ、という流れはまだ多くないですね。どちらも楽しむ方が増えたらいいなと思っています。

  

  

━━そうですね、「東京アートアンティーク2025(以下、TAA2025)」がそのきっかけになると良いです。

普段、骨董や古美術を中心にご覧になっている方が、タカ・イシイギャラリーさんをはじめ、TODA BUILDINGのギャラリーコンプレックスを初めて訪れると、例えば、どうやって作品を見たらいいだろう、と戸惑われることもあるかもしれません。

  

こういう見方をしてほしい、というものはなくて、ご自身の中で見て楽しんで、それぞれ解釈してもらえれば大丈夫です。

もし気になれば、スタッフがいるカウンターのところに置かれた、展示や作家に関する資料をちらっとご覧になったり、スタッフに聞いたりしてください。ギャラリーの敷居を高くしてるわけではないので、気軽に質問していただくと、展示についての理解がより深まるかもしれません。

  

  

━━ありがとうございます。現代美術は、見方やとらえかたが一つではないからこそ、作品を介したコミュニケーションが生まれていくのが魅力の一つと言えますね。

「TAA2025」の期間中は、森山大道さんと、アメリカのアーティスト セイヤー・ゴメスさんの二人展「Hellooooo」が開催中ですね。

  

 

撮影:高橋健治 / Courtesy of Taka Ishii Gallery

   

はい、ギャラリーのスタート当時からご紹介している写真家と、まるで写真のようなハイパーリアリズムの絵画を描くペインターによる展覧会です。

  

セイヤー・ゴメスが描いているのはすべて、彼が拠点を置いているロサンゼルスの風景。例えばストリップ・モールと呼ばれる、複数の店舗が連なって営業する、ロードサイドの商業施設の大きな看板や、ヤシの木があって夕日が沈んでいる様子など、ロスに行ったことのある人だったら、なんとなくイメージできるようなものです。

二人の組み合わせは、ニューヨークを拠点に活動するキュレーターのマット・ブラックからの提案で実現しました。5月31日(土)まで、天王洲のスペースも連動して開催しています。

  

セイヤー・ゴメスが描いたロサンゼルスの風景と、大道さんが撮影した東京の風景、それぞれの都市の根本にあるものを探るような、二人の作品による“対話”を、じっくりご覧いただきたいですね。

  

撮影:高橋健治 / Courtesy of Taka Ishii Gallery   

  

━━貴重な取材のお時間とお話の数々、誠にありがとうございました。

  

 

タカ・イシイギャラリー 京橋
https://www.tokyoartantiques.com/gallery/taka-ishii-gallery-kyobashi/

 

インタビュー・執筆:Naomi
https://naomi-artwriter.my.canva.site/

 

 

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