2025.4.24
“うつわあそび”で 人も産地も、笑顔でつなぎ続けて 空間コーディネーター 佐藤 由美子さん

佐藤 由美子様
━━佐藤先生の空間コーディネートは、有田焼や古伊万里、鍋島焼といったうつわに、オールドバカラやマイセンなどを合わせ、本当に華やかで美しいですよね。数多くの良質なうつわを長きにわたってご覧になってきたからこそ、かと思いますが、現在のご活動をはじめるきっかけをお聞かせください。
ありがとうございます。私の母が、佐賀県の出身でして、有田焼をはじめとする和のうつわが大好きでした。その他、骨董やアンティーク、ラリックなども好きで、それらが当たり前にある家に育って、骨董屋さんにもよく連れていかれるうちに、私自身も自然と、古いものやアンティークが好きになっていきました。
あるとき、東京から有田へ帰省し、母が好きだったうつわのお店を訪ねたのですが、閑散とした街の光景を目にして驚いてしまって。残念ながら母は早くに他界してしまったのですが、母のためにも何か少しでも産地のお役に立てないかと考え、有田の方々にお声がけしたのがきっかけで、母の和食器と、私の好きな洋食器を組み合わせ、“うつわあそび”としてブログで紹介しはじめました。Instagramが登場するかなり前の頃のことになります。
当時はまだ、和食器と洋食器を組み合わせるテーブルコーディネートの提案は珍しかったようで、目にとめていただき、お仕事のお声がかかるようになりました。
2016年、有田焼が創業400年を迎えた際は、新宿の京王プラザホテルさんで毎年開催されている『有田・伊万里やきもの夏まつり』で、古伊万里と現代の有田焼でテーブルコーディネートを提案し、有田の歴史の素晴らしさをご紹介するお仕事をさせていただきました。
また、有田に限らず伝統工芸も応援しています。漆器の魅力をコーディネートを通してご紹介したり、「肥前磁器」として、有田焼と伊万里焼、鍋島焼、そして三川内焼を一同にご紹介する催しを行ったり、プロデュース商品を手がけさせていただいたり、今ではさまざまなご縁やお仕事へと広がっています。
つい先日は、日本橋高島屋さんで、うつわやテーブルウェアをあつめて監修したイベント「TSUNAGU 響心-kyoshin-未来に繋ぎたいモノ」を開催することもできました。ですので最近は、テーブルコーディネートや空間コーディネートに限らず、本当に多くの方々と、伝統工芸や文化芸術とをつないでいくことが、私のお仕事かなと思っています。
スタイリングとプロデュースをした「TSUNAGU 響心ーKyoshinー 古から今、今から未来に繋ぎたいモノ」(日本橋高島屋2階ギャラリールシック)
━━素敵なお話しです。佐藤先生は本当にたくさんのお品物をコレクションなさっているかと思いますが、普段はどのようにお品物を選び、楽しんでいらっしゃいますか。
そうですね、古伊万里でしたら、母が好きだった柿右衛門の赤に子供のころから親しんできた影響か、海を渡った古伊万里、いわゆる“里帰り”をした、とても華やかな色使いや絵付けの古伊万里に惹かれ、集めています。
今は、有田焼創業400年のお仕事のとき、有田焼のルーツである古伊万里をご紹介されていた日本橋の前坂晴天堂の前坂さんに、本当にいろいろなことを教えていただいています。
前坂さんは、東洋古陶磁、江戸時代の鍋島や古九谷、柿右衛門、初期伊万里、古伊万里の、本当に素晴らしいお品物を扱っている方でらして、私が開いている「学ぶ会」では、古陶磁の学びを皆様へと「器の会」をお願いしています。その中では「本物を見ないと勉強にならない」とおっしゃって、驚くようなお品物を皆様に見せてくださっています。
でも本当にその通りで、やはり最初から最高のものを見ていると、目が育って、良いお品物がわかるようになるんです。参加されている方々もとても楽しんでくださっていて嬉しいです。ただ、皆さん本当に目が肥えてくるので、欲しいお品物はどれも、とても高価になってしまうのですが(笑)。
━━お品物を直接見る、そしてさわってみることが、本当に重要ですよね。
そうなんです。以前、前坂さんと、和食のお店のご主人やフレンチレストランのシェフにご協力いただいて、前坂晴天堂のお品物でお食事をいただきながら、前坂さんからうつわについてレクチャーしていただく、という会も行いましたが、お食事で使ってみると格別に、うつわの良さがわかりました。
ですので、古くて良いうつわを購入すると、普段は大切に飾って楽しみつつ、ここぞという特別な日には、食卓でお使いになることができるのも、大きな魅力ですね。
また古いお品物って一つ一つが手作りですから、絵付けのニュアンスも含め、同じものが一つとして存在しません。今を逃してしまうと、もう買うことができない、という点も、ロマンがあって素敵だと思いますね。
TAA2020で行ったコーディネート企画
━━佐藤先生は、「東京アートアンティーク2025(以下、TAA2025)」のタイミングで、前坂晴天堂さんや古美術 奈々八さん、孔雀画廊さんで、それぞれのお店のお品物を使った空間コーディネートをなさいます。とても楽しみですし、多くの方に、この機会にそれぞれのお店を訪れてほしいですね。
ありがとうございます、ぜひTAA2025のタイミングに、古美術や骨董に親しむ “ 最初の1歩” をはじめていただきたいですね。
私自身も最初は、本当に敷居が高いのでは、と思っていましたが、日本橋や京橋は、安心してお買い物ができる良い古美術や骨董のお店ばかり。皆さんとてもフレンドリーですし、こちらが知らないことも、丁寧に細かく教えてくださいます。オーナーの皆さんの熱量がお話ししていると伝わってきて、本当にお好きでいらっしゃるんだなと、思いますし、とても楽しいです。
ただし、初めて古美術や骨董のお店に伺うときは、TAA2025のガイドブックにも書かれている、お店でのマナーに予め目を通しておくと、自分も、お店の方々も、心地よく過ごせると思います。
━━ありがとうございます。もしもTAA2025で初めて、骨董や古美術のお品物を買い求めるなら、佐藤先生は何をお勧めしますか。
そうですね、本当に高価なお品物もたくさん紹介されていますが、手ごろなものなら数千円から購入できますし、例えば、手のひらにのるくらいのサイズのうつわや、色々な使い方が出来る蕎麦ちょこなどもおすすめです。
また、ご自身のお好きなモチーフを選ぶのも素敵です。私はカエルが好きで集めています。自宅のちょっとしたスペースにも飾りやすくて、おすすめです。
━━なるほど、アドバイスを参考にしながらお店を巡って楽しみたいと思います。貴重なお話を誠にありがとうございました。
佐藤由美子 Sato Yumiko
空間コーディネーター・食空間デザインStudio Stråle 代表。日本の伝統文化、伝統工芸を研究するかたわら、伝統工芸を広めるために活動。日本の物作り、西洋の物作りをテーブルを通して美しく表現し、その世界を応援。様式にとらわれない豊かな表現力をもって手掛ける空間は、多くの人々を魅了しています。
Instagram:@frogfrog1001
佐藤由美子先生による空間コーディネート
https://www.tokyoartantiques.com/event/yumiko-satos-spatial-coordination/
インタビュー・執筆:Naomi
https://naomi-artwriter.my.canva.site/