2018年 3月 8日 発行

BGM 夜話 

伊藤 潔史

 

 当ギャラリーでは、1991 年~ 2006 年の間に有線放送( ! ) によるクラシカル音楽番組を、営業時間中ずっとBGM として採用していました。当時を懐かしむ向きは少なくありません。現今でもBGM を活用する同業者は多くはありませんが、たまに店主の趣向と芸術的感性を反映した、素晴らしい「音楽空間」に出合うことも皆無ではありません。

 有線放送自体が廃止された2006 年に、折角のBGM を継続すべく、奮発してBOSE 社のオールインワン型コンポを導入し、いまに至っております。

 私が社内でひとり留守番をする折には、出社一番、今日一日にふさわしい選曲を腕組みして考えるのが毎回のよう。結局、本来の仕事が等閑になりますので、これは中毒目前かとも自覚します。

 専ら私有するクラシカル音楽のCD を再生するのが、小社スタッフの日課となっていまして、ご来駕される向きからも、幸い概ね好評をいただいております。

 基本的には、季節感から外れず、品位を損なわず、奇をてらわず、そして何よりも聴き手=お客様の不快にならないように留意します。それでも大抵は自己流すなわち自分の聴きたい曲を選曲しますから、自分の音楽センスが疑われる危険も大いに伴うものです。

 例えば、年末には巷ではベートーヴェンの第9が氾濫しますが、私的にはNG。弊社では一味違う「第9」、ブルックナーやシューベルト、ヴォーン・ウィリアムズのそれを選択します。これはそのホンノ一端。シベリウスの第6 番あたりも厳冬に向かう年末に相当ふさわしいかとみるものです。大バッハのカンタータも場合によって悪くはありません。

 幸いにして、お客様や作家の諸先生、そして同業の各位様には、クラシカル音楽愛好家が少なくなく、日ごろ、その博学多識を拝聴・享受しています。

 例えば、商談中に、再生中のBGM の曲に話題が向いて、話に花が咲き、シリアスな緊張感が自ずと解けて、円満に商談成立となった事例が過去沢山あります。これもBGM の賜物のひとつでしょう。

 一方で、わが乏しくも不甲斐ない、音楽のデタラメ知識も暴露されますので要注意。趣味と教養の一環とはいえ、この方面の予習・復習そして感性の磨きに、一層ちからを注ぎ込む努力が求められます。

 TAA2018 の会期中、わが企画展示の空間にふさわしいBGM = CD の選曲に、足りない知恵を絞る、悩ましくも楽しい宿題に目下取り組んでおります。さあ、どう組み立てましょうか…。