2011.4.5

店主インタビュー 翠波画廊

高橋氏

Q 美術に携わるようになったきっかけを教えてください。

A 私はもともとが美大で彫刻の制作をやっていたんです。それで絵の仕事をしたいなと思って、念願だったものですから。独立してから21年になるんですけれども、ここに移転して来てからは10年近くなります。それまでは銀座のビルの2階で事務所だけのところでやっていました。大学を出たばかりの頃は、ブラック展とかユトリロ展、マネ展といった美術館の展覧会の企画をして貸し出すというようなビジネスモデルの会社に勤めていました。私はどちらかというと画商になりたいと思ってまして、そこに販売部門がありましたからそちらの方に携わりながら、28の時に独立して現在に至っています。

Q 扱われている絵画はエコール・ド・パリの作家がメインですが、若い作家さんも扱っていらっしゃるのですか?

A 若い作家さんはまだスタイルが確立していないので、あまり取引しないのですが、一番若い作家でも30代半ばでしょうか。

Q そういった方はどうやって探すのですか?

A 定期的にパリには行くので、画廊街を歩いて良い作家を見つけたらコンタクトを取ったり、あとは外国の作家だけに限らずに、日本の中ででもいい作家はいます。うちの場合は、抽象よりはもう少しわかりやすい具象の絵を扱ってますから、そういったものを描いている人を中心に探しています。その中で一緒に仕事が出来そうだと思ったら扱っていくという感じです。
基本的には20世紀初頭のエコール・ド・パリの作家から後なんですよね。それ以前のものというのは、真贋の問題とか鑑定が難しいという問題がありまして。20世紀に入ってからは鑑定機関や鑑定家というのが割といるので、そういう意味では鑑定書をつけて販売するといった安心感があるんです。それ以前のものにしても、もちろん鑑定する人はいるんですけれども、あまりジャンルを広げすぎると自分自身もわからなくなりますから。我々の仕事というのは、専門化していくことの方が重要だと思っていますので、20世紀以降の有名画家の作品と現代の我々のカラーに合う若手作家を育てていきましょうというその2本立てで今は進めていっていますね。

Q 日本の作家も扱われるということですが、基本的には洋画なのですか?

A そうですね。特にジャンルを決めているわけではないのですが、たまたまそうなっています。古い作家ですと油絵だけじゃなくて、作家が生前に作ったオリジナル版画類を中心にストックしています。

Q 今お勧めの作品は何でしょうか?

A 今ハンス・イヌメというオランダの作家を並べていますけれども、この作家は非常に押してまして。今度の東京アートアンティークでもこの作家のクリアファイルを作りました。60才になるんですが、十数年前にパリの個展で非常に良く売れてた画家なんですね。それでその頃、是非日本でもやってみたいということで作家さんとコンタクトを取って、少しずつ紹介するようになったんです。今では原画、版画合わせて年間300点以上売れています。ですからうちでは一番主力の作家というか、金額はまだそんなに高くはなくて、どちらかというと数の方で非常に売れる売れっ子作家になってますね。

Q フランス以外にも海外は廻られるのですか?

A スペインに行ったり、イタリアに行ったり。やっぱり色んな画廊を見て回って、どんな作家がいるかその地域に行けば雰囲気がある程度わかりますから。いい作家がいればどこででも作家を見つけたいんですけれども、ただやっぱりパリですかね、今のところ。

Q 始めて絵を買う方が沢山ある中から選ぶために、何か楽しめるコツはありますか?

A まず一番大事なのは、買われる方がどういうものが好きかということですよね。あとは飾る場所とか、リビングであればある程度大きなものがいいでしょうし、玄関でしたら小さめのものがいいですし。そういった形でご提案するのですけれども、こちらからこれはこうですよ、と押し付けるよりは、所有してみようと思われる方のご意向とかテイストを聞いてそれに合わせて提案します。あとは、その中でいくつかご提案してどれが良かったですかと聞いて、迷い始めた時は、私はいつも言うんですけれども、最初にどちらを見ていいと思いましたか?直感を優先してください、と言います。最終的に迷われたら最初にいいな、と思った方を飾ってくださいと言います。
我々の仕事は金融業ではないので、将来値段が上がるか上がらないかというのは結果であって、最終的にそういうこともあり得るということで、そういったことを全面に押し出して売るというよりは、絵を1枚飾ってもらうことで住空間がすごく豊になったり、その絵を見て気分が非常にくつろいだり、元気が出たり、そういったことが絵を買って飾っていただく第一目的になると思っています。そういったことでご意向を聞きながら、一番その人に合うものを提案していきます。それに伴ってご予算とかが発生すると思うんですけれども、出来るだけそのご予算のなかで買ったよかったと思えるような、絵というのは消耗品ではないですから、お家の宝にしていただいて、思い出がいっぱいこもって、家に代々残っていくようなものになるんじゃないかと思います。

Q ご趣味は何かありますか?

A 旅行がとても好きですね。ですからパリに行けば、せっかくだからもう一都市駆け足で回ってみようかな、とか周辺の国に立ち寄ったり、それと美術館ですね。仕事柄美術館を尋ねて廻るというのは趣味ですね。好きかどうかでいうとフランスも好きなんですが、イタリアも好きなんですよね。ヴェニスとかフィレンツェとか定期的に訪れています。後はブダペストなんかはちょっとレトロでノスタルジックな感じがしていいですね。

Q 常に色々なところを廻ってらっしゃるのですか?

A そうですね、もちろん仕入れで海外に行くことはありますが、国内の百貨店で取引がありますので、国内もあちこち廻りますね。

Q こういった絵画の売れ行きというのはいかがですか?

A リーマンショック以前は世界的にもなんとなく好景気で美術品の値段も上がって景気が良かったんですね。その頃は確かに数が売れましたけれども、リーマンショック以降は売れる数はちょっと減って来ています。けれども、全く売れないわけではなくて、富裕層の方にはあまり関係ないような気がしますね。皆さん絵の仕事というと特殊な仕事で、必需品じゃないだけに景気の影響をもろに受けるんじゃないかと言われるんですけれども、確かに景気の影響は当然受けますけれども、全く売れなくなるような状況ではないですね。あとはどちらかというと仕入れが大事でいい作品があると売れますよね。ですからそちらをしっかりしていれば、お客さんはちゃんといると思います。

Q オリジナルプリントというのは常に市場に出回っているのですか?

A いいものというのは年々出なくなって来ていますね。仕入れは非常に苦労しますし、昔はものよりも販売力が優先されると思っていたんですが、今はどちらかというといいものを仕入れられるかどうか、そういうルートを確保してそれをしっかり所有できるかということが重要になって来ていますね。それだけ良いものがなくなったということなんでしょうかね。

Q 一番お手頃で売れやすいものはなんですか?

A 先ほども紹介したハンス・イヌメという動物の作家さんですが、この方の版画ですと、小品で7、8万ぐらいですね。この辺りは割と数が出ますね。うちで扱っているものはもう少し上になってきますので、主力になるものが20万、30万になりますから、そのあたりですかね。

Q 作品の額というのは、最初からついているのですか?

A 基本的に海外からくる時はキャンバスの状態かシートの状態で来ますから日本に来てから額装します。ただ、うんと古い、例えばここにあるユトリロなんかは当初からある額をそのまま活かして、ちょっと修理して使ってまして、いつ頃これがつけられたのかはわからないんですけれども、日本の額ではないと思いますね。

Q 今回東京アートアンティークにご来店いただく皆さんに一言メッセージをお願いします。

A 画廊というとどうしても敷居が高くて入りにくいイメージがあると思うのですが、そう思わずに気楽に入っていただいて、絵を見てもらって、気に入るものがあれば、ぜひお部屋に飾っていただきたいなと思います。もう少し美術や絵というものが生活の中に入りやすくなるようなことをするのが我々の仕事だと思っていますので、皆様により親しんでもらいやすい場の提供をしたいと思っています。価格的にはご要望を言っていただければ、高いものばかりではなくて、手頃なものもありますからお気軽に声をかけていただきたいと思います。

お忙しい中ありがとうございました。
(クリアファイルは期間中ご来店いただいた方に1枚プレゼントされるものです)

ウィンドウの写真はハンス・イヌメコーナー

(2011年4月)

翠波画廊

東京都中央区京橋3-6-12 正栄ビル1F

http://www.suiha.co.jp/

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