2025.9.13
『京橋アート・アベニュー』第25回 キリンの姿に「もしも」を重ねて。四季彩舎 石井聡子さんが語る、アートとの自由な出会い方
中央エフエムHello! Radio City「京橋アート・アベニュー」
第24回 2025年7月25日放送
出演者 四季彩舎 石井聡子 さん
ナビゲーター:JUMIさん
*本記事は中央エフエムさんに許可をいただき、収録内容を書き起こして編集したものです。
京橋からアートを発信!四季彩舎の挑戦
JUMI
ハローラジオシティ、京橋アートアベニュー。皆さん、中央区京橋には日本一のアート街があることをご存知ですか? 古から現代まで多彩なアートの魅力を発信する街なんです。ここは150ものギャラリーが集う日本有数の美術街。江戸時代からアートとゆかりが深く、美術館級のお宝からご家庭で楽しむアートまで何でも揃うアートの街です。そんな京橋に店を構える美術のプロの方たちを月替わりでお招きして、アートの街としての魅力を語っていただいています。
それでは参りましょう。京橋アートアベニュー。今日はスタジオに四季彩舎からディレクターの石井聡子さんをお招きしました。石井さん、よろしくお願いいたします。
石井
よろしくお願いいたします。
JUMI
石井さんとは初めましてです。
石井
初めましてですね。
JUMI
四季彩舎さんはこれまでにもこの京橋アートアベニューも含めて何回か番組にご出演いただいたことがあるんですけれども、本当に若いパワーがみなぎっていて、そして斬新なアートを紹介してくださってますよね。
石井
ありがとうございます。
かき氷の思い出はブルーハワイ:アートに親しむヒント
JUMI
さて、聡子さんにもちょっと伺いたいのですが、今日最初の質問は今日のメッセージテーマは「あなたのかき氷の思い出」です。なんだかアートの方に伺うのもなんですけども、教えていただいてよろしいでしょうか。
石井
私は流行りのふわふわのかき氷はデビューをしたことがなくて、昔ながらの市民プールのガリガリ系しか食べたことがないんですけど、かき氷といえばプールで熱くなった体を冷やすために、子供と真っ青なブルーハワイのかき氷を食べて、逆に寒くなって唇から口の中まで真っ青になるというお決まりの流れが思い浮かびます。頭キンとしたりとか……。
JUMI
あれがやっぱりかき氷ですよね。こんなに食べられるかしらって思っても食べられちゃう。舌がブルーなるんですね。
でもあの冷え冷えになれるあの感覚ってなかなか大人になると…
石井
感じなくなりますよね。そういう場面になかなか遭遇できなくなったりするからなんですけど。
JUMI
やっぱり思いっきり食べてみたいなって時もありますね。
石井
ありますね。
JUMI
では今度、ふわふわにも挑戦してみていただきたいと思います。
アートをもっと身近に:京橋から渋谷、大宮へ
JUMI
さあそして四季彩舎さん、京橋2丁目になりますね。このスタジオからも本当に近いところにあるんですけれども、今回スタジオにお持ちいただいたのは素晴らしく素敵な木彫ですね。このお話を進めていく前に、まず四季彩舎のことを伺いたいのですが、日頃どのような活動をなさっているのか、または京橋以外にもギャラリーを持ってらっしゃったりするのかというあたりも教えていただけますか。
石井
四季彩舎では、まだまだ敷居が高いと思われているアートの業界をもっと気軽に楽しんでいただけるように、日常の中にある場所、例えば街中や商業施設の中にアートとの出会いの場を広げていくということを目標に活動しています。このスタジオのあるスクエアガーデンさんでは、「東京コンテンポラリー京橋」というプロジェクトで2021年から活動を続けています。あとは今年に入って埼玉の大宮駅にある大きな商業施設の中で「OMIYA ART WALL」という企画を立ち上げ常設展示していること、それから5月には渋谷のヒカリエさんの中にも「ShinQs Gallery 5」という新しいギャラリーをオープンして、京橋を拠点としていろんなところでアートに出会える場を提供する活動をしています。
JUMI
なるほど。京橋起点で渋谷にも大宮にも、ということですね。皆さんぜひ京橋もそうですけれども渋谷とか大宮に行かれた折には目を向けてほしいなと思います。この京橋に関して言うと石井さんは、聡子さんと呼ばせていただきますけども、聡子さんのご主人と一緒にこの四季彩舎をやってらして、どんな街だと感じておられたり、変化を感じたりしていますか?
石井
私自身が画廊で働くようになったのは実はまだ数年なんですけど、結婚した当初、別の仕事をしていた時に時々京橋に訪れていた時と、この街に毎日通うようになってからは、街並みがガラッと変わっていて、大きなビルが綺麗に立ち並んでいる中に、四季彩舎のような築何十年という古いビルが混じっていて、とっても不思議な空間だなって。他の街では、あまりこういうのを見かけないなって思います。
JUMI
そうですよね。共存していて、しかもすごくマッチしていて、シーンがパンと変わるみたいな時がありますよね。
石井
角角で変わるみたいな感じがありますよね。
伝説のキリン「if」に込めた想い:木彫家 下山直紀の世界
JUMI
聡子さんは、今はこの現代アートに関わっていらっしゃいますけど、先ほどチラッとおっしゃった別な仕事というのはどんなことをなさっていたのでしょうか。
石井
先ほどの大宮にも常設展示をしている話は、実は私の地元が大宮で、大宮といえば盆栽の街です。その盆栽のお仕事をずっとしていて、なので遠からずアートに携わってきたという経緯があります。
JUMI
そうなのですね。そういう視点も持ちつつ、現代アートの世界でも素晴らしい作家さんに出会われるのだと思うんですけれども、石井さんの目からご覧になって、若い日本の作家さんの今の勢いってどうですか?
石井
自分の好きなものを作っていればそれでいいという方はいなくて、どうやって自分の作品を見せていくのかとか、どうすれば伝わるのかを考えていると思います。ギャラリーに展示していれば見てくれるというのではなくて、本人の視点で作品を発信していく力がすごくおありになるというか、エネルギッシュな方が多いなと思っています。
JUMI
なるほどね。今日もスタジオにお持ちいただいたのですけれども、本当に素敵な作品。これはどなたがお作りになった何というタイトルなの教えていただいていいですか?
石井
木彫家の下山直紀さんの「イフ」という作品です。
JUMI
「イフ」これは英語の「if」ですか?
石井
そうですね、「もしも」の「if」ですね。

JUMI
もしもの「if」。これを何と呼んだらいいのか…キリンのようだけど、キリンといっても動物園にいるキリンじゃなくて…
石井
中国の伝説の麒麟ですね。某ビール会社さんのあのキリンに近いですよね。
JUMI
だけどちょっと角の部分とかがね、なぜか片側しかないの。これはなぜなんでしょう。
石井
調べると一角の麒麟も伝説の中では存在しているということで、2本より1本の方がかっこいいなって作家さんが思ったそうです。「もしも」というちょっと不安定な感情と、2本ではなくて、欠けてる1本っていうのを作品の中にも込めているのかもしれません。これは私が見て感じたことなのですが。
JUMI
毛並みといい、一角の部分といい、目が素晴らしく生きていて、本当に素敵。尻尾もしゅっとしています。伝説の動物ではあると思うんですけれども、それが本当にこの場に降り立った感じで、すごく素敵な居住まい、佇まいですよね。これは聡子さん的にはどうですか?もう少しこの作品についても解説していただけますか。毛並みはどうでしょう?
石井
ただ彫って綺麗な毛流れを作っているということではなくて、このタイトルの「もしも、あの時こうしていたら」という複雑な感情や幻想と、それから「もしも」と違う今、この幻想と現実の狭間をさまよっているような、そういうラインを心がけて作っていらっしゃって、柔らかくも力強い造形になっていると思います。
JUMI
そうですよね、この毛並みが何とも言えない。そしてちょっと色づいているように思いますけども、これ何か着色しているのか、なんかこう墨のような感じで当てているのか、と想像させる、すごく不思議な毛並みですよね。
石井
少し焼いたりもしていらっしゃるようですね。黒い部分は柿渋だったりとか。
JUMI
そうですね。「if」って確かにもしもあの時って、私たちの中で振り返ってみたら、もしあの時こうしていたらっていうこと結構あるじゃないですか。例えば聡子さんは、もしもあの時こうだったらって思う瞬間はありますか?
石井
私はもし盆栽を選んでなかったらどうだったかなっていうのはあります。かなり特殊な世界に飛び込んだので。
JUMI
盆栽って本当に小さな宇宙じゃないですか。そして今日ここに持ってきていただいている「if」という作品、これも本当に小さな宇宙の中に全てが詰まっているなって思います。
盆栽の世界に生きてらっしゃった聡子さんと、今この四季彩舎さんでお仕事なさっているということには、共通項が結構ありそうですよね。
石井
そうですね、展示の仕方だったり、空間のとり方だったり、作品を見る時もどうしてこういう風に作られたのかなとか、そういうことが気になりますね。作家さんにもっと聞いてみたいとか。
気鋭の木彫家 下山直紀:革ジャンが似合うイケメン先生
JUMI
この作家さんについて、教えてください。女性の方ですか?男性の方ですか?
石井
男性の方で、革ジャンがめちゃくちゃ似合うかっこいい作家さんです。
JUMI
見てみたい!会ってみたい!
石井
すごくかっこいいです。
JUMI
そうなんですか。大学でも教えてらっしゃる先生ということで、その先生がお作りになった作品ですけど、大きさ的に言うと40センチぐらいかな、全長で言うとね。高さが25センチから30センチぐらい。重いのですか?
石井
このサイズだとそんなに重さは感じないです。大作になるとものすごい…
JUMI
大作もおありなのですね。
石井
あります。下山先生は大作の方が多くて、四季彩舎のようなこじんまりした空間で展示するのはおそらく初めてか相当珍しいのです。ですので、ギャラリーのサイズ感で新しく作っていただきました。
JUMI
うわー素敵ですわ。これが家にポンと置いてあったら、いつも帰ってきて「ただいま」とか、「行ってくるね」とか言いたい気分ですよね。名前つけたいけどイフちゃんでいいのかしら。
石井
はい、穏やかな時間が流れますよね。
JUMI
なんとなく「おかえり、今日も頑張ったね」みたいなことを言ってくれそうな雰囲気ですよね。今回この下山先生の作品も含めて何点四季彩舎さんにはおありでしょうか?
石井
全部で言うと10点ほどですね。展示しきれてないものもあります。ドンと大きい作品ももちろんあるのですが、こうした飾りやすいサイズもあり、やっぱり立体は実際に見ていただかないと。あっちこっちから。
アートはもっと自由でいい:四季彩舎で新しい扉を開こう
JUMI
そうですね。ぐるっと360度見ていただきたい作品ですよね。四季彩舎さんの場所は、中央区京橋2-11-9 西堀11番地ビルの2階ということでございます。ビルの2階ですからちょっと見上げてください。見上げるとここだというのが分かります。それでは最後になりますけどもリスナーの皆さんにぜひ石井聡子さんからメッセージをお願いします。
石井
先ほどお伝えしたように、盆栽もそうですけど、アートってまだまだ敷居が高いようです。私が会社辞める時に四季彩舎に行きます、と言ったら「美術わからないんでごめんなさい」と言われて…
JUMI
盆栽の生徒さんたちに?
石井
はい、分からないって何?と思ったんです。でも歌を聞くときは楽譜読めなくても皆さん気軽に聞きますし、難しいことがわからなくても、好きな曲ってあると思うんです。そういう気持ちで「分かる」「分からない」じゃなくて、自分が好きなジャンルを探そうぐらいの気持ちで、本当にギャラリーに足を運んでいただきたい。美術館は皆さん行かれるんですけど、ギャラリーはまだまだ怖いわっていう方も多くて…
JUMI
でもギャラリーはねガラス越しじゃなく見られますからね、そこのところをぜひ皆さんに味わってほしい。
石井
質感がそのまま伝わってきますよ。意外とギャラリストの人が解説をして教えてくれるんですよ。そういう意味では割と優しい場所なのかなと思います。
JUMI
ギャラリーを訪れた方が絶対に楽しいなって思いますのでね、多くの方にお越しいただきたいですし、聡子さんがギャラリーにいらっしゃったらぜひ盆栽の話も聞いてみてくださいね。これもまたすごく深い話ですから。
石井
よろしくお願いします。
JUMI
ありがとうございました。というわけで今日は四季彩舎から石井聡子さんにお越しいただきました。聡子さんありがとうございました。
石井
ありがとうございました。
四季彩舎:https://www.tokyoartantiques.com/gallery/shikisaisha/
