2025.12.31

『京橋アート・アベニュー』第27回 銀座で縄文土器に出会う?古美術川﨑が語る、古美術の魅力

中央エフエムHello! Radio City「京橋アート・アベニュー」

第27回 2025年9月27日放送

出演者 古美術川﨑 川﨑信之さん

ナビゲーター:JUMIさん

*本記事は中央エフエムさんに許可をいただき、収録内容を書き起こして編集したものです。

 

 

あなたの秋はいつから?秋のアートが始まる9月

 

JUMI
ハローラジオシティ。さてここからは京橋アートアベニューのコーナーをお送りします。ここ京橋という街は本当に昔から色々な意味で美術と縁が深い街です。今日は銀座1丁目にあります古美術川﨑から川﨑信之さん、そして東京アートアンティーク事務局の小野瀬さんをスタジオにお招きしております。お二人ともこんにちは。

 

川﨑 小野瀬
よろしくお願いいたします。

  

JUMI
今日は川﨑さんと小野瀬さんにスタジオにお越しいただき、私はリモートでお送りするという形になり、大変失礼いたします。川﨑さん、今日のメッセージテーマが「あなたの秋はいつから」ということなのですが、早速伺ってもよろしいでしょうか。

 

川﨑
はい。私の中では9月1日が秋の始まりというイメージです。なぜかというと、9月1日頃から美術商のオークションが始まるんですね。秋のオークションという名目で大きな催しが始まるので、ここから本格的な仕事を始めるといいますか、秋のアートというテーマが始まるのが9月なので、大体9月1日から本腰を入れて秋が始まるなという気がします。

 

JUMI
そうなんですね。普通の方より少し早い感覚がありますね。

 

川﨑
そうかもしれないですね。

 

JUMI
小野瀬さんはいかがですか?

 

小野瀬
そうですね。私は着物がとても好きなのですが、9月に入ると薄物の着物は着られなくなるという決まりがありまして、少し寂しい気持ちになりながら秋を感じています。

 

JUMI
近年は本当に暑いので、9月に入ってもまだ薄物の着物を着ていたいという気持ちもありますよね。

 

 

花器から縄文土器まで:銀座 古美術川﨑の世界

 

JUMI
それでは、お二人にお話を伺っていきたいと思います。まず川﨑さん、銀座一丁目にあります古美術川﨑は、どのようなお店なのでしょうか。

 

川﨑
最近は、花の器や縄文土器を中心に扱っています。京橋に以前はありました甍堂というお店で修行させていただいたのですが、そこで勉強して好きになったジャンルを、特にこのジャンルしか扱わないというわけではなく、気に入ったものを並べて展示販売しているという感じです。

 

JUMI
川﨑さんは初代ということではなく、ご家族で始められたお店なのですね。

 

川﨑
はい。父が京都で川﨑美術という店を営んでおりまして、その関係で京橋に修行に来たという流れがあります。父は貿易で海外のお客さん向けの商売をしていたのですが、私が甍堂で勉強したのは江戸時代以前のもので、父が扱うものとは全く異なるジャンルでした。そのジャンルを今、銀座の店で展開させていただいています。

 

JUMI
甍堂で修行なさった期間はどのくらいですか?

 

川﨑
5年半くらいです。当初は3年の予定だったのですが、無理を言って期間を延長してもらい、5年半にしていただきました。

 

JUMI
古美術というと随分幅が広いですが、その中でも特に古いものを扱っていらっしゃるのですね。

 

川﨑
そうですね。縄文土器などはかなり古いジャンルだと思います。

 

 

 

縄文土器は身近なアート:古美術川﨑で縄文の世界に触れる

 

JUMI
縄文土器って売っているの?と思う方も多いと思うのですが、実際はいかがなのでしょうか。

 

川﨑
そうですね。教科書でのイメージが強いと思うのですが、私もこの業界に入ってから、オークションで意外と出品されることが多いことを知りました。オークションで買い付けることもあります。また、考古に強い先輩と仲良くなったことがきっかけで、縄文土器というジャンルに興味を持つようになり、店で扱うようになりました。

 

JUMI
縄文土器は、完品の状態で出てくることはあるのですか?

 

川﨑
ないとは言えませんが、基本的には割れていることが多いですね。

 

JUMI
想像するにそうだろうなと思うのですが、土の中から出てくるというイメージがあります。

 

川﨑
基本的には発掘現場や田んぼから出てくることが多いと思います。大体は割れているのですが、割れた部品が1キロも先に飛んでいるということは考えにくいので、その場で部品がある程度揃っていて、足りない分を補修して、大体の形にはなることが多いと思います。

 

JUMI
なるほど。川﨑さんは、縄文という時代をどのように捉えていらっしゃいますか?

 

川﨑
今とは生活の全てが異なり、生きるということに特化した時代だったと思います。自然災害など様々な要因を含めて、今とは全く違う厳しさがあった時代だと思います。

 

JUMI
そうですよね。小野瀬さんも東京アートアンティーク事務局として、様々な美術品をご覧になっていると思いますが、縄文土器はいかがですか?

 

小野瀬
とても素敵ですね。現代アートと一緒に並べても新鮮で楽しめるので、特に若い方にご覧いただきたいなと思います。現代アート的な要素もあるのではないかと思います。

 

JUMI
古臭い感じがしないというか、唯一無二という言葉が当てはまるのかなと思うのですが、この点について川﨑さんはいかがですか?

 

川﨑
縄文土器でも、中期に作られた加曽利式土器という様式があるのですが、加曽利式土器は関東から出土することが多く、数も多いんです。似たような形のものは多いのですが、全く同じ形のものは恐らくないと思います。ただ、その形や様式でどこから出土したものであろうかということは想像できるので、そういった意味で似たような形のものはあります。

 

JUMI
なるほど。縄文というのは、今誰も知らない、誰も見たことがない時代ですが、想像力を働かせると、とても興味深い時代だっただろうと思います。

 

川﨑
そうですね。本当にそう思います。

 

JUMI
川﨑さんが縄文土器を扱われるようになったきっかけは何ですか?お子さんもいらっしゃるでしょうし、今若い方たちは縄文土器に対してどんな認識を持っているのでしょうか。

 

川﨑
そうですね。教科書の中のものというイメージが強いと思います。実際に買ったり、持ったり、触ったりできるというイメージがないので、意外と簡単に触ったりできるものであるということ、身近に置くこともできるし、値段も実はそんなに高くないということ、数万円からあるので、現代アートと比べると遥かに安価で手に入るものもあるので、気軽に手に取って飾ってもらえたら、結構良いのではないかと思います。

 

JUMI
数万円から手に入るということなんですね。古美術川﨑に伺うと、縄文土器を見ることができるのですね。

 

川﨑
はい、ございます。

 

JUMI
ぜひ皆さんに足を運んでいただきたいと思います。私も伺いたいと思います。

 

 

南蛮蒔絵の聖櫃(せいひつ):異文化が融合した美

 

JUMI
今日スタジオにお持ちいただいたのは、見事な作品です。後ほど写真でご紹介させていただこうと思っているのですが、この作品についてご紹介いただけますでしょうか。

 

川﨑
はい。これは南蛮蒔絵の聖櫃(せいひつ)と呼ばれるもので、宝箱のようなものです。ヨーロッパの方が日本に来た際に、日本の蒔絵師に注文して作らせたものだと考えられます。蒔絵の技術に驚いたヨーロッパの方が、宝箱のようなものを作ってくれと言い、それを自分の国に持ち帰ったという流れでしょう。

 

JUMI
それがまた日本に戻ってきたということなのですね。

 

川﨑
そうですね。ヨーロッパに多数あり、それを日本の業者やコレクターが買い戻したり、海外のコレクターが日本のオークションに出品したりと、様々な形で日本に戻ってきています。

 

JUMI
多分皆さん、どんな形なのか想像がつかないと思うのですが、海賊船の中に海賊が奪ってきた金銀財宝を入れている大きな宝箱を、机に乗るくらいのサイズに小さくしたもの、というイメージでしょうか。少し天井がかまぼこ型になっていますね。

 

 

川﨑
そうですね。ドラゴンクエストに出てくる宝箱のような感じです。

 

JUMI
本当にこのような形のものがあるのですね。

 

川﨑
はい、これは非常にわかりやすい宝箱という形をしています。

 

JUMI
一体どんなものが入っていたのだろうと想像してしまいますが、とてもシックですね。もっと金箔が張り巡らされた派手なものかと思っていました。

 

川﨑
そうですね。当時の金色とは少し状態が変わり、落ち着いた色になっているということもあると思いますが、比較的落ち着いた色味ですね。ただ、ヨーロッパの方と日本人とでは好みが異なり、ヨーロッパの方は余白を好まない傾向があるようです。伊万里焼や蒔絵でも、日本人は余白に美しさを感じることが多いのですが、南蛮蒔絵は余白が少なく、模様が隙間なく埋められています。これは恐らく、ヨーロッパの方の好みによるものだと思います。

 

JUMI
なるほど。余白ではなく、埋め尽くされた美しさなのですね。

 

川﨑
そうですね。侘び寂びといった要素は、ヨーロッパの方にはあまり好まれない傾向があり、派手で煌びやかなものが好まれるようです。

 

JUMI
古美術川﨑に伺えば、拝見することができるということですね。

 

川﨑
はい、もちろんです。

 

JUMI
ありがとうございます。
小野瀬さん、様々なアートがあふれる街ですが、今回の古美術川﨑さんの作品やお店について、ご紹介いただけますでしょうか。

 

小野瀬
古美術川﨑さんは、センスの良い小さな作品を多く扱っていらっしゃいます。お店自体は小さいのですが、眺めているだけでも楽しめると思います。特に女性の方に合うお店ではないかと思います。お店は銀座1丁目にあり、京橋プラザのすぐ近くなので、京橋から歩いてもすぐです。銀座からもアクセスしやすいので、ぜひ立ち寄ってみてください。

 

  

古美術川﨑「ミセニテ」:花器との出会いを銀座で

 

JUMI
ありがとうございます。最後に、川﨑さんからリスナーの皆さんにメッセージをお願いします。

 

川﨑
はい。私の店を含め、複数の店舗で「ミセニテ」という催しを行います。私は10月14日から19日まで、古美術川﨑の店舗で花の器を中心に展示即売会を行いますので、花の器に関心がある方は、ぜひ遊びに来ていただけたら嬉しいです。

 

JUMI
アートの秋にぴったりの催しですね。ぜひ皆さん、お立ち寄りください。本日は銀座1丁目にあります古美術川﨑から川﨑信之さん、そして東京アートアンティーク事務局の小野瀬さんにスタジオにお越しいただきました。お二人とも、ありがとうございました。

  

古美術川﨑:https://www.tokyoartantiques.com/gallery/art-kawasaki/

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